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【弁護士解説】遺言とは?「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のメリット・デメリット

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はじめに

相続手続きが開始すると、遺産の分け前をめぐり、家族や親族の間で揉め事が起こることはしばしばあります。こうした相続トラブルを防ぐため、自分が亡くなった時に備えて、遺言書を作成しておこうと考えている人も多いのではないでしょうか。もっとも、一口に遺言といっても、実際には様々な種類があり、法的に有効な遺言を遺すためには、正確な法律知識を身につける必要があります。

今回は、遺言の種類やそれぞれの特徴等について、弁護士がわかりやすくかつ詳しく解説します。

遺言とは?

遺言とは、誰に、どのような財産をあげたいかを遺言者が決めることができる制度です。もちろん、法律上一定の制限はありますが、法定相続とは違う内容の相続を行わせることができます。また、そもそも相続人ではない人に対して財産をあげる(遺贈させる)ことも可能です。例えば、相続人が子供二人の場合、法律上の相続分は2分の1ずつとなりますが、遺言によって、長男の相続分を3分の2、次男の相続分を3分の1とする、といったことが可能となりますし、子供一人に全財産を相続させることも可能となります。遺言書が作成されていれば、原則としてその内容通りに相続手続きが進められるため、相続人の間でのトラブルが発生しにくくなります。法律上決められた相続人(兄弟姉妹は除く)の遺留分を侵害する場合は、その限度で、遺言によって財産を受け取った人(受遺者)は金銭の支払いを請求される可能性はありますが、遺言に従った財産の承継自体は、遺留分を侵害する場合でも有効となります。

遺言の種類

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力が発生します。そのため、効力が発生した後に、遺言者から直接遺言に関する真意を確認することができないので、遺言者の真意を確保するとともに、偽造や作成後の変造などを防止する必要性が強いことから、民法は、遺言書の作成について厳格な方式を定めています。

遺言には、普通方式遺言と特別方式遺言があります。普通方式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。これに対し、特別方式遺言には、死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言の4つがあり、これらは、遺言者本人が書面を作成する余裕のない状況などを想定して、そのような状況に置かれた場合にも遺言をすることを保障するためのものです。特別方式遺言が認められる状況は稀であり、通常は普通方式遺言を利用することになるため、ここでは、普通方式遺言について詳しく解説していきます。

・自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印する方法で作成する遺言です。他人が代筆したり、パソコンで作成したりした場合は、無効になります。ただし、遺言書に添付する財産目録については、遺言者が署名押印することを条件に、パソコン等で作成することが認められています。

・公正証書遺言

公正証書遺言は、証人2名以上の立会いのもと、遺言者が口述した内容を公証人が筆記し、遺言者・公証人・証人が署名押印する方法で作成する遺言です。完成した遺言書の原本は、公証役場で保管されます。

・秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を作成して封印し、公証人と2名以上の証人の前に提出して遺言書の存在を証明してもらう方式の遺言です。自筆証書遺言と異なり、パソコン等で作成したり、遺言者以外が作成したりしても問題ありませんが、本人の自筆の署名と押印は必要です。もっとも、実務上は、秘密証書遺言はほとんど利用されていません。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
遺言者が遺言の全文、
日付、氏名を自書して作成
※財産目録はパソコン等での作成が可能だが、他は自書である必要がある
証人2名以上の立会いのもと、
遺言者の口述内容を公証人が筆記し、遺言者・公証人・証人が署名押印して作成
遺言者が遺言書を作成して
封印し、公証人と2名以上の
証人の前に提出

各遺言のメリット・デメリット

・自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言は、自分一人で作成することが可能なため、いつでも手軽に作成することができます。また、紙とペンさえあれば作成できるため、費用もほとんどかかりません。

・自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言が有効に成立するためには、民法で定められた方式を守る必要があります。自筆証書遺言は自分一人で作成できるため、専門家のチェックなしに作成した場合、方式に不備があり無効となる場合があります。

さらに、自筆証書遺言を自分で保管する場合、紛失したり、自分の死後に発見してもらえなかったりするリスクや、他人によって改ざん、偽造、隠匿されるといったリスクがあります。また、相続手続きが開始した後に、相続人が家庭裁判所で検認という手続(家庭裁判所が、遺言書の形状や内容、封印の有無等の確認、記録する手続)をとる必要があるため、時間と手間がかかり、相続人の負担となってしまうというデメリットもあります。なお、法務局の「遺言書保管制度」を利用し、法務局に遺言書を預けることで、これらのデメリットを一定回避することができます。遺言書保管制度を使えば、法務局で、遺言書の方式が守られているかの形式面のチェックをしてもらうことが可能です。また、相続開始後の検認も不要となります。もっとも、法務局は、あくまで遺言書の形式面をチェックしてくれるのみであり、遺言者に遺言能力(判断能力)があるかどうか、遺言の内容が法的に有効かといった点についての相談には乗ってくれません。

・公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は公証人が作成してくれるため、方式の不備により無効となるおそれはほとんどありません。また、完成した遺言書は公証役場にて保管されるため、紛失や改ざんのリスクもなく、家庭裁判所での検認手続きも不要です。加えて、遺言者が自書する必要がないため、病気等の理由により自分で遺言書を作成することが難しい場合にも作成できます。さらに、今までも、公証人に出張を依頼すれば自宅や病院での作成が可能でしたが、令和7年10月1日から、デジタル化が始まりました。これによって、リモートでの作成も可能になり、公証人に出張費用を出さずに自宅等で作成することができるようになるため、ますます利用しやすくなることが期待できます。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言を作成するには、公証人に支払う手数料を用意する必要があります。この手数料は、遺言の目的である財産の価額に対応する形で定められているため、財産の価額が高額であればあるほど、手数料も高額になります。また、公証人だけでなく、証人も2名用意する必要があるため、作成に手間がかかります。

こうしたデメリットはあるものの、公正証書遺言は3つの方式の中で最も確実性が高いため、実務上広く利用されています。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言は、遺言者が作成して封をしたうえで提出するため、公証人や証人を含め誰にも内容を知られることがありません。また、本文はパソコン等で作成したり、代筆してもらったりしても構わないため、遺言者が自書できない場合にも作成することができます。

秘密証書遺言のデメリット

秘密証書遺言は遺言者が自分で作成し、内容をチェックされることがないため、方式の不備により無効となるおそれがあります。また、公証人と証人を用意する必要があるため、作成するには費用や手間もかかります。さらに、自宅で保管するため、紛失したり、死後に発見されないといったリスクがあり、家庭裁判所での検認手続きも必要です。

秘密証書遺言が実務上ほとんど利用されていない理由は、このようにデメリットが多いのに対し、メリットが少ないからです。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
メリット・自分一人で作成可能
・費用が安価
・方式の不備により無効になるおそれがほぼない
・紛失、未発見、他人による改ざん・偽造・隠匿等のリスクがない
・家庭裁判所での検認が不要
・遺言者が自書できなくても作成可能
・デジタル化により、どこでも作成が可能に
・誰にも内容を知られることなく作成可能
・遺言者が自書できなくても作成可能
デメリット・方式の不備により無効になるおそれあり
・自宅保管の場合、家庭裁判所での検認が必要
・自宅保管の場合、紛失、未発見、他人による改ざん・偽造・隠匿等のリスクあり
・手数料が必要なため、費用がかかる
・証人が2名必要
・方式の不備により無効になるおそれあり
・費用や手間がかかる
・紛失、未発見のリスクあり
・家庭裁判所での検認が必要

以上のように、3つの種類の普通方式遺言には、それぞれ特徴がありますが、リット法律事務所では、公正証書遺言の作成を推奨しております。費用がかかるというデメリットはありますが、遺言の内容が、方式や遺言能力等の点から、事後的に無効とされるリスクが最も低いためです。遺言者の希望は、遺言の内容によって財産をしっかりと承継することであり、そのような目的を確実に達成するためには、公正証書遺言が最も適切だと考えています。

公正証書遺言を作成する際には、公証役場との調整や遺言の文案の作成が必要となりますが、リット法律事務所の弁護士が丁寧に対応いたします。

監修者

■藤本拓大(ふじもと たくひろ)
弁護士(大阪弁護士会)
弁護士法人リット法律事務所 共同代表

中央大学法学部卒業。司法試験予備試験に合格後、司法研修所(第71期)を修了。
2019年に裁判官に任官し、横浜地方裁判所(医療集中部)、松江地方裁判所(刑事・少年部)、東京地方裁判所(民事執行センター)にて勤務。
在任中、アメリカ・ヴァンダービルト大学ロースクールにて客員研究員としても活動。
2025年4月に弁護士登録し、現職。医療部での勤務経験も活かし、医療事件、介護事件等に注力している。

Xアカウント https://x.com/fujimoto_lawyer

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