不同意性交等罪は「後出し」でも成立する?同意が判断される時点と何年前まで対象か【元刑事裁判官の弁護士が解説】
後から「同意していなかった」と言われたという事情だけで、不同意性交等罪が成立することはありません。
罪になるかどうかは、性行為があった時点で相手がどういう状態にあったかで判断されるためです。
ただし、その時点で同意がなかったという申告があれば、公訴時効が完成していないかぎり、何年後であっても捜査が始まることがあります。
合意のうえだったはずのことで疑いを向けられる状況を、ご自身だけで整理するのは難しいでしょう。
この記事では、同意の有無が何をもとに判断されるのか、何年前の行為まで対象になるのか、連絡が来たときに何をすべきかをお伝えします。
【この記事の結論】
不同意性交等罪が成立するかどうかは、性交等が行われた時点で相手がどういう状態にあったかで判断されます(刑法177条)。相手の供述しかない状況でも逮捕・起訴されることはあり、公訴時効は15年です(刑事訴訟法250条3項2号)。被害者が18歳未満だった場合は、18歳になるまでの期間が加算されます。2023年7月13日より前の行為は、改正前の罪で判断されます。連絡が来たら、相手へ直接連絡せず、記録も消さないまま、早い段階で弁護士に相談しましょう。
刑事事件のお悩みは、弁護士法人リット法律事務所にご相談ください
法律トラブルは、早い段階で弁護士に相談するほど、取れる選択肢が広がります。
「弁護士に頼むべきかわからない」という段階でも、まずは状況をお聞かせください。
- 状況を整理して、今やるべきことをお伝えします
- 被害者との示談交渉を弁護士が行います
「後出し」の申告だけで罪が成立するわけではない

不同意性交罪の「後出し」は法律上の用語ではありません。
合意のうえだったはずの性行為について、後になって相手から「同意していなかった」と言われる状況を指して、インターネット上で使われている言い方です。
申告が行為の直後でも何年も経ってからでも、不同意性交等罪が成立するかどうかは、性交等が行われた時点で相手がどういう状態にあったかで判断されます(刑法177条1項)。
以下では、申告だけでは成立しない理由と、後から気持ちが変わった場合の扱いを順に見ていきます。
「同意していなかった」という後出しの申告だけで成立するわけではない
相手が「同意していなかった」と述べているだけでは、不同意性交等罪は成立しません。
刑法177条1項が求めているのは、同意がなかったことだけではないからです。
暴行や脅迫、アルコールや薬物の影響、経済的または社会的な関係上の地位に基づく影響力による不利益の心配といった行為・事由により、相手が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせたか、その状態にあることに乗じたことまでが必要になります(刑法177条1項)。
条文が挙げる行為・事由は8つあり、これらに類する行為・事由も含まれます(刑法176条1項各号)。
法務省も、これらの行為・事由があったことに加えて、被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になっていたことが必要だと説明しています。
参考:法務省「性犯罪関係の法改正等Q&A」
同意があったかどうかだけを取り出して争っても、結論は出ません。
なお、相手が16歳未満の場合(13歳以上16歳未満なら、行為をした人が5歳以上年上の場合)は、同意の有無にかかわらず成立します(刑法177条3項)。
当時どのような事情があったのかを整理して、弁護士に相談しましょう。
後から気持ちが変わった場合はどう判断される?
行為の時点では同意していた相手が、後になって後悔した、関係が壊れたというだけでは、不同意性交等罪にはなりません。
ただし、同意を得られていたと受け取っていたことと、相手が実際に同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になっていたかどうかは、別のことです。
断りにくい関係や状況に置かれていた場合、当人の受け止めと条文の当てはめが食い違うことがあります。
また、始める時点で同意があっても、途中で拒まれた後に続けた場合は、その時点から先について要件を満たすことがあります。
同意があったかは行為時点の事情から判断される

2人しかいない場面で、同意があったかどうかをどうやって判断するのか、と思う方は多いのではないでしょうか。
捜査機関と裁判所が見ているのは、当事者が述べている内容そのものと、その内容を裏付ける材料が周囲に残っているかどうかです。
以下では、何が判断の材料になり、何を残していても同意の証明にはならないのかを整理します。
相手の供述は前後のやり取りや当日の状況と照らして信用性が検討される
相手が同意していなかったと述べているだけで、有罪の認定に至るわけではありません。
刑事裁判では、「供述」(捜査や裁判で述べた内容)が具体的で一貫しているか、ほかの客観的な材料と食い違っていないかが検討されます。
照らし合わせる材料になるのは、当日のメッセージのやり取り、移動や滞在の記録、店舗や施設に残る記録、同席していた人の説明といったものです。
いずれも同意があったことを直接示すものではなく、行為の時点で同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になっていたかどうかを推し量る材料、という位置づけになります。
客観的な証拠がなくても、供述の信用性が認められれば有罪認定の根拠になり得ます。
また、信用性が検討されるのは有罪かどうかを判断する場面の話で、申告があれば捜査が始まることはあります。
同意書や録音があっても同意が認められるとは限らない
事前に同意を確認する書面を交わしていたり、やり取りを録音していたりしても、それだけで同意があったと認められるとは限りません。
判断されるのは行為の時点の状態であり、その前に交わした記録は、行為の時点でどうだったかを直接示すものではないためです。
むしろ、断りにくい関係のもとで作られた書面であれば、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になっていたことを示す材料として見られることもあります。
インターネット上には、同意書や録音を残しておけば安全だとする説明が見られますが、そのとおりにはなりません。
何を残しておけば安全かという発想ではなく、実際に何があったのかを時系列で整理して、弁護士に相談しましょう。
相手の供述しかなくても逮捕・起訴されることはある

客観的な証拠がなく、相手が述べている内容しかない状況でも、逮捕や起訴に至ることはあります。
逮捕状は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると裁判官が認めた場合に発付されるもので、有罪の立証に足りる証拠がそろっていることまでは求められていないためです(刑事訴訟法199条2項)。
逮捕の後、逃亡や罪証隠滅のおそれといった事情があれば、勾留され、身体を拘束されたまま捜査が進むこともあります(刑事訴訟法60条1項)。
起訴するかどうかを決めるのは検察官で、ここでも、述べられている内容が具体的で一貫しているか、前後の事情と整合しているかが検討されます。
一方で、申告があれば必ず逮捕されるわけではありません。
身体を拘束するかどうかは事案ごとの判断になるため、連絡が来た段階で弁護士に相談しましょう。
刑事事件のお悩みは、弁護士法人リット法律事務所にご相談ください
法律トラブルは、早い段階で弁護士に相談するほど、取れる選択肢が広がります。
「弁護士に頼むべきかわからない」という段階でも、まずは状況をお聞かせください。
- 状況を整理して、今やるべきことをお伝えします
- 被害者との示談交渉を弁護士が行います
公訴時効が完成していなければ何年前の行為でも対象になる

何年前の行為まで対象になるのかは、公訴時効が完成しているかどうかで決まります。
行為から時間が経っていても、時効が完成していなければ、捜査や起訴が行われる可能性があります。
なお、性的な被害の申告が、行為の直後ではなく時間が経ってから行われること自体は珍しくありません。
2023年の改正法(令和5年法律第66号)の附則は、改正から5年後の見直しに向けて、性的な被害を申告することの困難さについても調査するよう政府に求めています(同附則20条)。
申告に時間がかかることがある、という前提が法律にも置かれています。
申告が遅れたという事実だけで、申告の内容が直ちに疑われるわけではありません。
不同意性交等罪の公訴時効は15年
不同意性交等罪の公訴時効は15年です(刑事訴訟法250条3項2号)。
犯罪行為が終わった時から15年が経過するまでは、検察官が公訴を提起できます。
2023年の改正で、それまでの10年から5年延長されました。
なお、不同意わいせつ罪や、けがを負わせた場合の罪では年数が異なります。
ご自身の事案でどの罪が問題になるのかによって数え方が変わるため、年数をご自身で数えて判断せず、弁護士に確認しましょう。
被害者が18歳未満だった場合は18歳になるまでの期間が加算される
犯罪行為が終わった時に被害者が18歳未満だった場合、公訴時効の15年に、犯罪行為が終わった時から被害者が18歳に達する日までの期間が加算されます(刑事訴訟法250条4項)。
例えば被害者が13歳の誕生日を迎えた日の行為であれば、18歳になるまでの5年分が加わり、合計20年になります。
加算の起算になるのは犯罪行為が終わった時であって、被害者が被害を認識した時ではありません。
この加算も2023年の改正で設けられた仕組みで、若い時期の被害ほど申告までに時間がかかりやすいことを踏まえたものです。
2023年7月13日より前の行為は改正前の罪で判断される
2023年7月13日より前に行われた行為は、不同意性交等罪ではなく、その時点で定められていた罪(強制性交等罪など)によって判断されます。
2023年の改正法の附則が、施行前にした行為の処罰については従前の例によると定めているためです(令和5年法律第66号附則2条1項)。
新設された不同意性交等罪が、それより前の行為にさかのぼって適用されることはありません。
一方で、公訴時効については扱いが違います。
延長後の年数は、改正法が公布された2023年6月23日の時点でまだ時効が完成していなかった罪にも適用され、すでに完成していた罪には適用されません(同附則5条)。
処罰の根拠になる罪は行為の時点の法律で決まり、時効の年数は公布の時点で完成していたかどうかで決まる、という方向の違う2つの扱いが並んでいます。
どの罪が問題になり、時効が何年になるのかは行為の時期によって変わるため、弁護士に確認しましょう。
申告を受けた後にすること・してはいけないこと

相手や警察から連絡が来た段階では、よかれと思ってした行動が、後から不利に働くことがあります。
誤解を解こうとして相手に連絡することと、見られたくない記録を消すことが、その代表です。
ここでは、してはいけないことと、代わりに何をするのかを3つに分けて整理します。
相手に直接連絡しない
相手へ直接連絡して誤解を解こうとするのは避けましょう。
連絡そのものが口裏合わせや働きかけと受け取られ、身体を拘束する必要がある事情として評価されることがあるためです(刑事訴訟法60条1項2号)。
共通の知人を介して伝えてもらう形も同じです。
相手に伝えるべきことがある場合は、弁護士を通じて進めましょう。
弁護士が窓口になれば、いつどのような内容を伝えたのかが記録に残る形で進むため、不当な働きかけと見られる余地が小さくなります。
やり取りや記録を消さない
当時のメッセージや通話の履歴は、消さないようにしましょう。
ご自身に不利に見える記録であっても、削除したこと自体が不利な事情として扱われることがあります。
端末を初期化する、アカウントを削除するといった対応も同じです。
前後のやり取りは、行為の時点の状況を確かめる材料になるため、そのまま残しておくことが、結果としてご自身の説明を支えることにつながります。
どの記録をどの段階で示すのかは、弁護士と相談しながら決めましょう。
早い段階で弁護士に相談する
相手や警察から連絡が来た段階、あるいは来るかもしれないと感じた段階で、弁護士に相談しましょう。
捜査が始まってからでは、説明の順番や記録の扱いについて、選べる選択肢が狭くなります。
相談では、行為の時点で何があったのか、その前後にどんなやり取りが残っているのかを時系列で整理し、どこが争点になるのかを見立てることになります。
取り調べを受けることになった場合の対応も、その場で考えるのではなく、あらかじめ確認しておけます。
身に覚えのないことで疑いを向けられるのは、それだけで重い状況です。
一人で抱え込まず、弁護士に相談しましょう。
刑事事件のお悩みは、弁護士法人リット法律事務所にご相談ください
法律トラブルは、早い段階で弁護士に相談するほど、取れる選択肢が広がります。
「弁護士に頼むべきかわからない」という段階でも、まずは状況をお聞かせください。
- 状況を整理して、今やるべきことをお伝えします
- 被害者との示談交渉を弁護士が行います
被害を受けた側が相談できる窓口

被害を受けた側にとっても、時間が経ってから相談してよいのかは切実な問題です。
性的な被害について相談できる窓口は、警察だけではありません。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、全国共通の短縮番号「#8891」に電話すると最寄りのセンターにつながり、産婦人科の医療、カウンセリング、法律相談といった専門機関と連携して対応しています。
警察の性犯罪被害相談電話は「#8103」で、土日・祝日や執務時間外も当直が対応します。
加害者への損害賠償の請求は、刑事の手続きとは別に進められるものです。
相談できるかどうかと、立証できるかどうかは別の問題です。
行為から時間が経っていても、どう扱われるのかが分からないまま抱え込むより、まずは窓口へ相談しましょう。
参考:内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」
警察庁「性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号#8103(ハートさん)」
不同意性交罪の後出しに関するよくある質問

最後に、不同意性交罪の「後出し」の申告をめぐって迷いやすい2点を取り上げます。
Q:嘘の被害申告をした相手を罪に問えますか?
A:人に刑事の処分を受けさせる目的で、事実と異なる申告をした場合は、虚偽告訴罪にあたることがあります(刑法172条)。
法定刑は3か月以上10年以下の拘禁刑です。
ただし、申告の内容が事実と異なるというだけでは足りず、処分を受けさせる目的があったことまで認められる必要があるため、成立する場面は限られます。
相手の受け止めがご自身と食い違っているだけで、嘘の申告とはいえない場合もあります。
まずはご自身にかけられた疑いへの対応を優先し、相手の責任を問えるかどうかは弁護士に確認しましょう。
Q:示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?
A:示談が成立しても、必ず不起訴になるとは限りません。
不同意性交等罪は、告訴がなければ起訴できない犯罪ではないため、相手が告訴を取り下げても、そのことだけで不起訴が決まるわけではないからです。
起訴するかどうかを決めるのは検察官で、被害の内容や前科の有無なども踏まえて判断されます。
ただし、示談が成立していることは、処分を決めるうえで考慮される事情になります。
示談をご自身で相手に持ちかけると、相手への働きかけと受け取られることがあるため、弁護士を通じて進めましょう。
不同意性交罪の相談は弁護士法人リット法律事務所へ

後から「同意していなかった」と言われたという事情だけで、不同意性交等罪が成立することはありません。
判断されるのは申告の時期ではなく、行為の時点で相手がどういう状態にあったかです。
一方で、公訴時効が完成していなければ何年前の行為でも対象になり、行為の時期によって、適用される罪も時効の年数も変わります。
相手や警察から連絡が来たら、相手へ直接連絡せず、やり取りの記録も消さないまま、早い段階で弁護士に相談しましょう。
弁護士法人リット法律事務所には、刑事事件を扱った経験のある弁護士が在籍しています。
疑いを向けられている方も、被害を受けて相談先に迷っている方も、まずはご相談ください。
刑事事件のお悩みは、弁護士法人リット法律事務所にご相談ください
法律トラブルは、早い段階で弁護士に相談するほど、取れる選択肢が広がります。
「弁護士に頼むべきかわからない」という段階でも、まずは状況をお聞かせください。
- 状況を整理して、今やるべきことをお伝えします
- 被害者との示談交渉を弁護士が行います
監修者
■藤本拓大(ふじもと たくひろ)
弁護士(大阪弁護士会)
弁護士法人リット法律事務所 共同代表
中央大学法学部卒業。司法試験予備試験に合格後、司法研修所(第71期)を修了。
2019年に裁判官に任官し、松江地方裁判所(刑事・少年部)で刑事事件・少年事件を担当。ほかに横浜地方裁判所(医療集中部)、東京地方裁判所(民事執行センター)でも勤務。
在任中、アメリカ・ヴァンダービルト大学ロースクールにて客員研究員としても活動。
2025年4月に弁護士登録し、現職。
刑事裁判を担当した経験を活かし、不同意性交等事件をはじめとする刑事事件にも取り組んでいる。
